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The locus of the moon

The locus of the moon

神を狩るもの-序章-

神を狩るもの

ー序章ー

彼の者は闇の中唸り声を上げ、池袋の町を徘徊していた。
いつからだろうか。
夜の帳が降りる頃、町から人影が無くなりヒトのカタチをなさない「彼の者」と呼ばれる化け物が徘徊するようになった。
彼の者は唸り声を上げ、人を捜し街中を歩いた。
”血だ、血が欲しい。ヒトの血が足りないのだ”
一人だった彼の者は時間がたつにつれ一人、二人と集まりはじめた。
10人程の集団になったとき一人が鼻をヒクヒクと動かし指を指した。
”あそこだ、あそこにヒトがいる”
彼の者は喜びに打ち震え走り出した。
”血だ。血が足りないのだ。我が腕でヒトを抱き血を手に入れるのだ”
彼の者は走りながら考えた。
その頭の中には”血を手に入れる”それしかなかった。
先頭を走っていた彼の者は立ち止まり数メートル先の闇の中に立ち尽くす少女を見つけた。少女の歳は15歳頃。身長は低く、柔らかな茶色の髪に赤い瞳を持っていた。
少女はショートカットにした髪を風にゆらしながらぼんやりと天を仰ぎ彼の者に目をやる気配はない。
”血だ、血をよこせ!!”
彼の者が少女に襲いかかった刹那光が闇を切り裂いた。
”・・・血”
アスファルトに血が流れ出た。闇を切り裂いた光は彼の者に突き刺さりその光からは血が滴り落ちていた。
光。それは少女の放った日本刀の光だった。
「残念。でも血が手に入ってよかったね。自分の血だけどね。」
少女はにやりと笑うと突き刺した刀を抜いた。抜いた箇所からは彼の者の血が溢れ出た。
彼の者はがくりとアスファルトに膝をつくとそのまま事切れた。
少女はその骸をあとにすると次の獲物へと目を移した。
彼の者は少女の行為を見ると少女は獲物ではなく狩人だと理解した。
そして狩人から逃げるべく、彼の者は四方へと逃げはじめた。
”狩人だ、早く逃げろ”
彼の者は口々にそんな言葉を叫び少女から逃げようとした。
そのとき少女とは違う人影が彼の者の前に現れた。
「逃げるなんて考えが甘いんだよ」
その人影はそう呟くと持っていた槍でかの者を突き刺した。
”うっ。ゴフッ”
彼の者は口から血を溢れ出すと槍の持ち主を見た。
槍の持ち主は14か15歳と思われる少年。黒髪に黒い瞳。
そしてその顔には彼の者への侮蔑の表情が浮かんでいた。
少年は彼の者に突き刺した槍を抜くとまた次の獲物へと向かって行った。
この少年も狩人だったのだ。

二人が彼の者を全て倒すのに10分も要さなかった。
少女と少年はまるで舞うように彼の者を次々となぎ倒した。
そして全ての者を倒し終わった時、2人の元に一人の女性が現れた。
「お疲れ様です。お二人とも相変わらず素晴らしい働きですわ。」
女性はそう言うと刀と槍を預かり待たせていた車のドアを開いた。
二人は車に乗り込むと不機嫌そうに黙り込んだ。
そして3人を乗せた車は東急ハンズの方向へと走り去って行った。


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